2015年から始めた「Layers of Color」シリーズからは、具象的なモチーフの構造から解放されたところで、純粋視覚現象のような絵画を追求しています。
本作品は、2016年に入ってからの第14作、同シリーズ通算第23作です。
本作も前作「1613」同様に「デフォルト画面」を構築してから、フリーな塗りと削りを経て完成しました。色使いも「1613」と似ていて「1613」とは、サイズの違う兄弟のような関係にあります。
「デフォルト画面」を説明します。
自分の他作品の部分画像を、制作キャンバスにプロジェクションし、それを基にしながら即興的な判断でトレース、変化、省略しながらモノクロ線画として書き移します。その線画に沿ってアクリル絵具で描写し、ランダムな厚みを持たせたのが「デフォルト画面」と呼んでいる初期レイヤー群です。
これまでのシリーズ制作経験から、
「中型以上のサイズの作品では、ただフリーに筆を運ぶだけでなく、デフォルト画面として何かしらの画像を、ある程度の厚みで仕込んでおいた方が、最終的な画面のパワーや密度感が高まるのではないか」という感触があり、それを初めて試したのが前作「1613」でした。
期待通りの効果があったので「1614」でも同様の手法で制作しています。(「デフォルト画面」の絵柄は変えています。)
兄弟のような「1613」と「1614」の違いは、「画面の流れの向き」です。
「1613」が画面に対して縦方向のベクトルを感じさせるのに対し、「1614」では、横方向のベクトルを感じさせます。
キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねます。そして、水をかけながら耐水サンドペーパーで研削していきながら画面を造っていきます。
仮板の上で制作し、完成後は、清掃して乾燥させてから木枠に張るので、制作上、衛生上にも支障なく、マチエール特性や発色のクオリティもキープできていると思います。画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
その支持体上に絵具によってしか存在し得ない光景。物理的な結晶としての絵画。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。
以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した技法・マチエールでペインティングの可能性を追求しています。