本作は「Layers of Color」シリーズ、2019年制作の6作目、シリーズ全体の41作目にあたります。
アクリル絵具の積層と研削という手法とそこから生まれる発色・マチエールは藤本の全作品に共通する特徴ですが、対象物(モチーフ)の 構造から解き放たれた、純粋な視覚現象のような絵画を追求しているところが本シリーズの特徴です。
この「1906」は、本シリーズの特徴を一番反映している作品の一つです。
他の作品以上に、事前プランなし、具象的な形をイメージせず、さまざまなタッチで色が重なったレイヤー構造です。
また、グロス(透明)orマット(不透明)なレイヤーも入り混じっており、本当に削ってみないことにはどんな画像が現れるか全くわかりませんでした。
(自分でプログラムしたゲームの結末を自分がわからずにプレイしていくような感覚で、エキサイティングなものです。)
「どこまで削ることが、この作品にとって最も豊かな状態なのか。」を、熟考しながら少しずつ削り出していった結果です。
キャンバスを表裏ともに丁寧に整えた後、画面側の部分に、20層以上の塗りを施します。そして、水を注ぎながら、耐水性のあるサンドペーパーで削りながら画面を制作していきます。
仮設の板の上で制作し、完成後は洗浄して乾燥させた後、木枠に張るので長期保存における衛生面でも問題はないです。画面は削りによって滑らかで、布で拭けばきれいになります。
ペインティングの特徴のひとつである「重層的なマジック」を利用して、支持体の上にのみ存在するスペクタクルを実現する。物理的な結晶としての絵画。
1999年以来「アクリル絵の具の積層と研磨」という一貫した技法とマチエールで 絵画の可能性を追求しています。