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【INTERVIEW】「犬」を通じて人間を考える:タイラクルカ

2024/04/22
TRiCERA ART TRiCERA ART

犬をモチーフに人の自由や関係性について思索を深めた作品を描くタイラクルカ。
伸びやかな筆致で独特の色彩・構図を描き出す作風が人気を呼び、100人10 2023/2024での入選を果たしました。


works_mother
100人10 2023/24出展作品 《mother》(2024)


9s Galleryでは、タイラクルカをはじめ、100人10で注目を集めた新進気鋭のアーティスト5名のグループ展“UPDRAFT” Rising Artists from 100人10 2023/24を2024年5月18日(土)~6月1日(土) にかけて開催します。

本記事では、タイラクルカとのインタビューを通じ、コンセプトやアーティストとしての姿勢を紹介します。


2000年東京出身。
2022年の個展「してん」を機に作家活動を開始。
犬をモチーフに描き、人間が生まれながらに持っている自由に対する、自分と他者の認識のズレを問うような作品を発表。

2022年OJUN賞受賞、2023年上野の森美術館大賞入選、ACTアート大賞最優秀賞受賞。


「犬という生き物は自由なのだろうか?」という問いが出発点


-タイラクルカさんの作品のコンセプトについて教えてください。

展示ごとにさまざまなテーマでシリーズ作品を発表していますが、根幹としては、人間が生まれながらに持っている自由に対する、自分と他者の認識のズレを問いたいという意識があります。

活動初期は、若者の政治への不参加をテーマに、人物を描いた作品を制作していましたが、2年ほど前から「犬」をメインモチーフにした作品を描き始めました。



《Japanese politics》(2022)


「犬」に辿り着いたきっかけは、ある日リードで繋がれて散歩している犬を見かけて、「犬という生き物は自由なのだろうか」と考えたことです。犬は人間にとって相棒や友と形容されますが、基本的にリードをつけられ、交配させられ、商品のように売られていくという、人間からの支配下におかれた存在とも言えます。

そうした着想をきっかけに、最初は犬を「限りある自由を生きる存在」として描いたんです。

ただ、一方で、散歩している犬はあくまでも自由気ままで、しっぽを振って飼い主の顔をたまに見上げながら歩いている。犬自身の姿からは、「人間への憎しみ」や「支配からの脱却」みたいなものは感じられないんです。そこまで考えて、自分が犬に対して一方的に「不自由そうだな」という印象を押し付けていたことを自覚しました。

そうした思考の変遷もありつつ、現在は犬を通じて、人間の先入観やエゴを表現する作品を描いています。

それから、犬って見た目だけでは年齢や性別が分かりにくいですよね。だから、絵画に何が描かれているのか、見る人によって印象が異なる画面作りがしやすいというメリットもあると思っています。人間を描くと、鑑賞者は無意識にその人物が男性なのか、女性なのかを判断してしまいますが、犬はその点フラットなので、作品の世界がより広がっていくと思っています。


何を描くのか常に考える姿勢から生まれる多様なテーマ


-展示ごとにテーマを変えているとのことですが、最近取り上げられたテーマはどのようなものですか?

最近では、シューベルトの作曲した楽曲をテーマにした作品を制作しました。元々、音楽史が好きで、特に作曲家と詩人が協働して作った歌曲に興味があるんです。シューベルトだったら、ゲーテが詩を付けた《野ばら》とか。


左:《D.275 Rose》(2024)   右:《D.275 Lose》(2024)


音楽って、聴いている人によって想像する情景が変わってくると思うんですが、自分も絵画で同じことを目指したいなと考えていて。見る相手の想像力を信頼して、あえて境界線を描かずに、「この色面は何を表しているのか」を鑑賞者にゆだねるような作品を描きました。

-お話を伺っていると、様々な着想源をお持ちだなと感じています。作品のテーマは常に考えているのですか?

常に何を描くか、は常に考えるよう心がけていて、エスキース帳にメモは結構取っています。中学生の頃から読書が趣味で、その頃から読んでいた古事記やギリシャ神話から思いついたアイディアもよくあります。作家活動の初期の頃には、星新一『午後の恐竜』をモチーフにしたシリーズも描いていました。頭の中で物語を考えるのが癖なんですが、背景や世界観を作り込む材料として、今も本はよく読みますね。

-タイラクさんの作品も構図が印象的です。

あえて空いたスペースにモチーフを描き込みすぎない、色も重ねて載せすぎない、というのは常に意識しています。

画塾に通っていた時期に受けた指導で、自分の画風が量産化されてしまう気がしていて。「構図的に寂しいから、このスペースには何か置こう」とか、「油彩は何度も色を重ねて深みを持たせよう」とか。

作家活動をスタートした当時は特に、そういった指導を忘れようと思って、意識的に広い空間を空けたまま描くということを実践していました。試行錯誤を重ねて、今の画風にたどり着いたという感じです。


5月グループ展への出品作品について


-5月の出品作品についても教えてください。

tairakuruka_character
《character》(2024)

今回は、「異質」というテーマから色々発展させていきたいと思っています。

最近、SNSでシャイな女の子が美容師に髪を切ってもらってイメチェンするという動画が流れてきて。趣旨としては美容師のカットで垢抜ける女の子のbefore/afterを見せる、というものなんですが、出てくる女の子はほとんど喋らず、母親が「この子はこういう子どもで、シャイを克服したいからこういう髪型にしてほしい」というオーダーを全部説明するんです。

その母娘の在り方が、最初とても過保護なものに感じたんです。でも、色々な関係性が認められている現代で、一方的に彼女たちを「異質」だと断ずるのは違うと思っていて。じゃあ、私はなぜ違和感を抱いてしまったのか、認められる関係性とそうでないものを線引きするのは何なのか……色々な問いを投影した作品を作りたいです。

-かなり骨太なテーマですね。

実は、テーマが何であれ、作品の表面には絶対に出さないというのも心がけているところです。部屋に飾る絵画って、窓から見える風景のようなものだと思っていて。その時に、部屋から重すぎる風景があってもしんどいじゃないですか。

なので、鑑賞者が疲れている時でも、見た時に負担にならないように、作品の表面としては明るく見えることを意識しています。

開催概要

https://www.tricera.net/ja/artclip/blog975
“UPDRAFT” Rising Artist from 100人10 2023/24
開催日程:2024/5/18(土)から 2024/6/1(土)
営業時間: 12:00 〜 19:00
※ オープニングパーティー(招待制):5/17(金)
※ 最終日 18:00 CLOSE
※ 休館日:日曜日、月曜日

会場:9s Gallery by TRiCERA
〒106-0031 東京都港区西麻布4-2-4 The Wall 3F
アクセス:東京メトロ日比谷線 六本木駅 徒歩10分・広尾駅 徒歩10分
東京メトロ千代田線 乃木坂駅 徒歩10分
連絡先:​​03-5422-8370

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本展に関するお問い合わせはこちら





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著者

TRiCERA ART

現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net