紋次郎シリーズ第11作です。
紋様をモチーフに藤本の共通手法である「アクリル絵具の積層と研削」によって絵画化した作品です。
本作では、江戸時代の「変わり海松(みる)文様」という、海藻を抽象化した紋様から、図案を藤本で作成して制作しました。
一方で色使いは、日本の伝統色だけにはこだわらず、素材の紋様から、自分がインスパイアされる配色でレイヤーを構成しています。特に本作では、作者が好きな60年代末から70年代ポップ音楽のようなテイストを取り入れています。
江戸のかたちをファンキーでサイケな自由さで提示してみました。
モチーフの紋様から作成した図案をキャンバスに転写、図案と作品に合った絵具のレイヤー構成で積層し、耐水サンドペーパーで水をかけながら研削していきます。
紋様の図像と、絵具の発色具合、双方のバランスで一番良いと思える状態になるまで、画面チェックと研削を繰り返し、完成になります。
キャンバスは表裏両面に入念な地塗りによるプレパレーションの後、一旦仮板の上に張ります。
画面側に部分、ベタ合わせて20層以上の描写としての塗りを重ねています。
仮板の上で制作し、完成後は清掃乾燥させてから木枠に張って完成となります。
画面は、削り出しているため平滑で、ふきんなどで拭き掃除もできます。
絵画の特性の一つ、「重層的なマジック」を活かしきること。
制作を志した頃からの、私の欲求に沿ったやり方を1999年に見つけました。
以来、「アクリル絵具の積層と研削」という一貫した手法で絵画の可能性を探求しています。