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マルセル・デュシャンの代表作品を6つ紹介

2023/03/27
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マルセル・デュシャンといえば、「現代アート」という概念の父として有名な20世紀を代表するアーティストの一人です。
今回は、そんなデュシャンの代表的な5つの作品をご紹介します。
彼がなぜ20世紀で最も影響力のあるアーティストと呼ばれるのか。作品を読み解くことで、それが見えてくるはずです。
デュシャンの生涯については、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてお読みください。
現代アートの父【マルセル・デュシャン】を解説


①泉

《泉》が与えた衝撃

1917年、ニューヨークで開催されていた独立芸術家協会に出品された《泉》は美術界に衝撃を与えました。
ひっくり返された男性用小便器に「R. Mutt」とサインされただけのこの作品は、デュシャン自身が委員を務めていたにも関わらず、「これはアート作品ではない」と展覧会側からの猛抗議を受けました。
結局協会から拒否されたこの作品は展示を取りやめさせられ、デュシャンは独立芸術家協会を脱退することになります。
この作品は美術史上に名を残す大スキャンダルとなり、非合理性、ナンセンス、非論理性を価値あるものとするダダイズムの芸術家の間にも大きな旋風を巻き起こした作品でした。

「考えること」を楽しむアート

しかし同時に、現代アートの原則である「考えて楽しむ」こと、「芸術」という言葉の領域を常に自覚的に拡大させていく作品であること、という点において、革命的な考え方を提示した作品でした。
2004年には、世界のアート界を牽引する500人のアーティストと批評家により「20世紀で最も影響力のあるアート作品」として認められています。
fountain
泉, 1917


②階段を降りる裸体 No. 2

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この絵画の出現は、まさに絵画表現の中の「事件」だったといえます。
エティエンヌ=ジュール・マレーという生理学者が発表していた、人体に印をつけた上で運動する姿を瞬間的に連続撮影するという記録写真に影響を受けています。マレーは医師・生理学者であり、人間を生理学的に研究するためにこの写真を発表しましたが、当時この写真術は医学の世界よりも美術の世界に衝撃を与えました。また、ほぼ同時期にエドワード・マイブリッジという写真家が発表していた階段を降りる女の連続写真は、デュシャンが直接モチーフにしたヴィジュアル・イメージでした。
marray
エティエンヌ=ジュール・マレー《Man Walking》1890 - 1891年

mybridge
エドワード・マイブリッジ《Woman Walking Downstairs》1887年
デュシャンもその成果を使って新しい「運動」の表現を探ったアーティストの一人でした。
運動するとうの体は円筒と円錐で表現され、さらにそれが連続した像が、ボケやブレなどはなくはっきりと描かれています。
キュビズムと未来派の芸術運動を組み合わせたスタイルは、モダニズムに新しい風をもたらしました。


③レディメイド

既製品をアートにする

レディメイドとは、日本語にすると「既製品」という意味の言葉です。
何かの用途を意図して作られた物体(「ファウンド・オブジェクト」とも呼ばれます)=既製品を使って、複数の既製品をくっつけたり組み合わせることによりできたものをレディメイド・アートといいます。
1913年、デュシャンは《自転車の車輪》というレディメイド・アートを作りました。
wheel
自転車の車輪, 1913

魅力的ではないものを作品にするアート

これは、ひっくり返された自転車の車輪が木製のスツールにネジ留めされているというシンプルな作品です。
現在の研究では、この組み合わせのアイディアは、エルザ・フォン・フライターク=ローリングホーフェンという、デュシャンと親交のあったもう一人のダダイズム芸術家によって考案されました。作品としてはデュシャンが発表したことになっています。
デュシャンは、レディメイドについてこんな言葉を残しています。

「私のアイディアというのは、美しさによっても醜さによっても注意を引かないようなものを選び出すことです。つまり、私自身がそれを見るときに抱く無関心具合を探していると言ってもいいでしょう」



コラム:デュシャンが考えた「アート」

「現代アート」の基礎概念である、「鑑賞者がそれを経験することで成り立つ作品」というアイディアは、デュシャンのこの言葉に込められています。


「創造的な行為というのは、芸術家だけによって行われるのではありません。鑑賞者が、作品の経験について記述したり解釈したりすることで、作品が外の世界と接続されます。こうして、芸術家と鑑賞者が協働して作品を作り上げるために、鑑賞者も創造的な行為の一端を担っているのです」


"The creative act is not performed by the artist alone; the spectator brings the work in contact with the external world by deciphering and interpretingits inner qualifications and thus adds his contribution to the creative act."



④大ガラス(彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも)

大ガラスの由来

文章を言いかけているような独特のタイトルを持つこの作品は、1915年から1923年の8年間の間に、いくつかの断絶を挟みながら長い時間をかけて制作されました。
「大ガラス」は「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」というオリジナルタイトルの慣習的な呼び方になっています。
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彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも, 1923

様々な素材とグリーンボックス

大きな2枚のガラス板の表面に、鉛箔、ヒューズ線、ホコリまでをも素材としていくつかの記号的な模様が描かれています。
偶然を取り入れた制作過程や、通常の油絵とは異なる素材による描画の職人的な技術など、さまざまな要素が複雑に絡み合った構成になっています。それぞれのモチーフに込められた意味や物語、最終的な形態に至るまでに生まれたスケッチや写真、メモなどをまとめた《グリーンボックス》というコンパクトなマルチプル作品も発表されています。
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グリーン・ボックス
green_box_drawing

《大ガラス》に影響を与えた作品

《大ガラス》は、難解なことで有名なレーモン・ルーセルの『アフリカの印象』という小説の舞台に触発されています。
impression_d'Afrique
パリ出身のデュシャンが1915年にアメリカに移住してからは、この《大ガラス》に集中的に取り組みました。

この作品は、1923年に、「未完」として制作を放棄されました。しかも、初めて展示された会場から搬送された際に衝撃でガラスに大きなヒビが入りました。デュシャンは修復をしましたが、作品の中に偶然性を残しておくためにある程度のヒビを意図的に残しました。
large_glass_detail

それぞれの要素の意味

《大ガラス》は上下二つのパートに分かれます。
下部が独身者(男性)、上部が花嫁(女性)を表現しています。
デュシャンは、独身者の自己愛的な側面が、機械の反復性と偏執性に似ていることをアイディアにしています。下部に描かれている様々なマシーンの行程で、独身者の性欲が気化し、上部の花嫁の脱衣を促すという性愛をめぐるストーリーが描かれています。



⑤ローズ・セラヴィ

名前の由来

ローズ・セラヴィは、「Rrose Sélavy」(もしくはRose Sélavy)と綴り、デュシャン自身が女性に扮したキャラクターの名前です。
この名前はフランス語で発音したときに、「Eros, c'est la vie」(性愛、それが人生さ)というセンテンスにも聞こえることからダジャレ的につけられました。
ダダイストの写真家、マン・レイとコラボレーションして、セラヴィのポートレート作品は1920年代に継続的に制作されました。デュシャンは、いくつかの他の作品にも「ローズ・セラヴィ」の名義でサインをしました。

「ローズ・セラヴィ」に込められた意味

このキャラクターは、アーティストの個人性や主体性にロマンティックな感情を抱いて惚れ込む、という行為を皮肉っています。一見魅力的な女性に映る「ローズ・セラヴィ」は実はただの男性で、「自分だけのものを作っているつもりでも、1年後にそれを見ると、自分の芸術がどこから来たのか、まったく知らないうちにその根源が見えてくる」とデュシャンはのちのインタビューで語っています。
rose_selavy




⑥1)落下する水、(2)照明用ガス、が与えられたとせよ

デュシャンは1923年以降、制作を放棄し、ほぼ25年間チェス競技に向かっていたと信じられていました。そのため、この作品が発表されたときアート界の誰もが驚きました。
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この作品は様々な素材を使って描かれた絵画で、木製のドアにある一対ののぞき穴(人間の両目に対応している)を通してのみ向こう側を見ることができます。
そこには、眺望を背景にして仰向けになって顔を隠し、足を広げ、片手でガス灯を持った裸の女性が描かれています。
作品に込められた意味はいまだに解釈が分かれるところですが、女性のモデルは当時のガールフレンド、ブラジル出身の彫刻家のマリア・マルティンスが務めました。



「現代アート」についてもっと詳しく知りたい方には、次の記事もあわせてお読みください。
現代アートとは結局なに?知れば知るほど面白い!

現代アートにも色々ある!ジャンル別にみる現代美術の解説

現代アートを知るためのキーパーソン10人




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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net