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現代アートを知るためのキーパーソン10人

2023/03/14
TRiCERA ART TRiCERA ART

現代アートの始まり

近年よく見かけるようになった「現代アート」。
美術作品を飾るために作られた美術館や博物館、ギャラリーなどのみならず、街のさまざまな場所で現代アート作品を目にすることができます。
しかし、そもそも「現代アート」とは何を指すのでしょうか?「現代アート」という言葉で言及される「現代」とは一体どの時代のことなのでしょう?
今回は、このような疑問に答えていきます。

アートを知るには、具体的なアーティストと、その作品を知るのが一番です。よくわからないと言われる「現代アート」を、少しだけわかるようになるための10人の人物を紹介します。

20世紀の著名な現代アーティスト・1910 - 50年代

①マルセル・デュシャン


泉 1917

それまでのアートとは根本的に異なるという意味での現代アートの創始者として最も名前があがるのが、マルセル・デュシャンです。男性用の小便器をひっくり返してサインを書いただけの作品《泉》に、一度は見覚えがあるのではないでしょうか?
アートというと、もっと直感的に「美しい」「楽しい」「素晴らしい」と、考えることの前に感じることができるものだというイメージがあるかもしれません。
しかし、デュシャンが《泉》によって示しているのはそのような従来のイメージを批判し、新しい「アート」を提示することでした。


デュシャンは、従来の意味でのアートを「網膜的絵画」としてカテゴライズしました。視覚刺激のみに快さを与えそれで完結するという点において、網膜で楽しむことができるのがアートの定義だったのです。
しかし、それに対してデュシャンは自身の制作を「思考で楽しむことができる」ものとして定義しました。
男性用小便器それ自体に、美しさ、卓越した職人的技術、また神秘性が宿っているのではありません。網膜的には価値のないものを「アート作品」「芸術」として提示することで、そしてそれを鑑賞者が鑑賞すること=人間の思考により初めて「アート」という行為が成立するのだと言います。

この視点の転換は、「何か本来的に美しいものがアートだ」という受動的な態度を捨て、「これにはどんな意味や背景があるのだろう?」と作品の奥深くまで探るような能動的な態度で作品と対峙することを鑑賞者に要求します。

このような作業は、必ずしも楽しいものではありませんし、皆が皆常にそのような望ましい鑑賞をできるわけではありません。
それすらも前提として受け入れ、作品や作者の背景、鑑賞者のその時のコンディションや背景といった鑑賞行為に関わる全ての要素を「作品」を成立させるために不可欠の要素だと考えるというのが、デュシャンの示したことでした。

このような根本的な姿勢をデュシャンは鮮やかに提示することに成功し、その精神はまさに今活躍中のほとんどの現代アーティストに受け継がれています。

②パブロ・ピカソ


パブロ・ピカソも、多くの人に愛される歴史に残るアーティストです。
有名な逸話としては、彼が最初に喋った言葉はスペイン語で「鉛筆」を意味する「Lapiz」だったというものがあります。

早熟の天才として名を馳せたピカソですが、西洋美術に革命を起こしたことでも広く知られています。
彼は「キュビズム」という美術運動を生み出しました。
西洋美術を特徴づける透視図法(遠近法)という空間の捉え方においては、画家の目を中心として水平線上に消失点があり、モノが視点から遠ざかるにつれて消失点に全ての風景が集約されていくという明確なルールが存在します。建物などの、大きな幾何学的オブジェクトを見ると、遠ざかるにつれてすぼまっているように見えることを正確に表現するための手法でした。


しかし、ポール・セザンヌなどの影響もあり、ピカソはそのような画一的な空間の捉え方に反旗を翻します。

アヴィニョンの娘たち 1907

さまざまな角度から見た時の肉体の形をパーツごとに組み合わせたり、アフリカ古代美術に見られる仮面や土偶の造形から強い影響を受けた独特の顔貌をもつ人物になっています。
現実をどのように捉えるか。この問題に、ピカソは他にない方法で鮮やかに答えることに成功しました。
裸婦を描いていても、従来のようにエロティックさを訴えかけるのではなく、空間自体、三次元を二次元に表現するという行為自体に鑑賞者の目を向けさせるという効果を持っていると言えるでしょう。



③アンリ・マティス


マティスは「色彩の魔術師」とも呼ばれた、20世紀を代表する画家です。
ピカソが形態(フォルム)の表現に革命を起こしたとすれば、マティスは色彩表現を現実のものから解放した人物と言えます。形態ではなく色彩でデッサンをするという意識が彼にはありました。


赤いハーモニー 1908

この作品はマティスの最高傑作と評されることも多いものです。大胆で鮮やかな赤い色彩をメインとして、壁紙やテーブルクロスの模様である青い唐草模様が、模様として以上の大きな存在感を持って描かれています。
奥行きという意味での空間を消失させ、ぺったりとした色彩のみが見えてくるような効果を生み出しています。
油絵だけでなく、切り絵も積極的に制作し、晩年には切り絵を頻繁に制作していました。


コラム 〜現代アートではないものとの違い〜

現代アートは、その直前の時代区分を指す「近代美術(モダンアート)」と明確に区別されます。

「近代」という言葉は、一般的には封建主義時代や中世より後の資本主義社会・市民社会の時代のこと、すなわち「個人主義」や「民主主義」の時代のことを指し示します。
近代主義とは、国家や社会の権威に対して個人の権利と自由を尊重する立場をとる姿勢のことを意味しています。美術においても、自由や個人性に価値を置くものが近代の特徴でした。

それに対して、1960年代あたりから台頭し始めた現代アートは、デュシャンが創始した「コンセプトを楽しむ」という前提に立ちます。そのため、もちろん目にも面白く感覚的にも楽しめる作品はたくさんありますが、その作品がつくられるまでの前提となる考え方やアーティストの知識があることでより深く理解できるという作品が主要なものと考えるとよいかもしれません。
21世紀になると、本格的に様式は個人個人により全く違うものになり、かつてのように特定の美術運動といったわかりやすいカテゴライズを拒否するアーティストが大多数を占めています。

20世紀の著名な現代アーティスト・1960 - 90年代

④ジャクソン・ポロック


抽象表現主義の代表格であり、戦後のアメリカ美術においてもっとも有名なアーティストの1人であるジャクソン・ポロック。
アルコールに溺れながら制作を続け、最期は運転していた車が電柱に激突してなくなったという壮絶な人生は、「反骨精神に満ちた荒くれ者」というアーティスト像を決定づけた第一人者といえます。


Convergence, 1952
ポロックは、「アクション・ペインティング」という新たな制作の方法を開発したことで名が知られています。
キャンバスは、通常イーゼルという道具に立てかけて、地面に垂直な向きで制作するのが普通です。しかし、ポロックはキャンバスを床に寝かせ、さらに筆を使わずに絵の具を撒き散らす=ドリップ・ペインティングという手法で描きました。
画面全体を均等な熱量で描く=オールオーバーな描き方とも言えます。ポロックの起こした革命も、画面内から奥行きを消失させ、画面一面が「絵画」として立ち上がるというものでした。
出来上がった結果としての絵画ではなく、それを描く過程=アクションを重視していました。


⑤アンディ・ウォーホル


ウォーホルは、当初絵本や広告を手掛けるイラストレーターとして働いていました。
30代に入ってから、キャンベル・スープ缶やドル紙幣などの大量生産品・コピーされたものをモチーフとしてアート作品を制作し始めました。大衆文化、大量消費社会を意図的に扱ったある種チープな作品群は、初めは手厳しい批判を受けていましたが、次第に彼の活動は「ポップアート」という新しい芸術様式として認められ、音楽や映画業界のポップスターと一緒に華々しいイメージを作り上げました。


ウォーホルは、「すべてを知りたければ表面だけを見ればいい。」と語っており、自身の作品には深い意味はなく見るものがすべてだと容姿ともに自己をプロデュースすることに徹底しました。

また、彼は自身のスタジオ「ファクトリー」を創設しました。
これは工場のように作品を効率良く生産する意図で作られ、また角界の著名人やセレブから放浪者まで幅広い層の人々を招き入れ、交流を深めました。
ファクトリーは内装全体を銀色で埋め尽くしたため、別名「ザ・シルバーファクトリー」とも呼ばれていました。ウォーホルは「アート・ワーカー」と呼ばれる芸術労働者を雇い、数々の名作を生み出しました。

このような工場的プロセスは、実はウォーホルが初めてではないどころか、古くからヨーロッパでは見られた光景でした。ティツィアーノやルーベンスなどの近代以前の大画家たちも、自身の工房を経営して大量の見習いを雇い、自身の仕事を最小限に抑えることで大量かつ高品質な作品制作を実現していました。

⑥シンディ・シャーマン

自らを被写体とするコンセプチュアルなセルフポートレイトが代表的な作品で、50年代の大衆映画のワンシーンに出演する女優たちのお決まりポーズに扮して撮影する写真シリーズ「《Untitled Film Stills》がよく知られています。


学生時代はスーパーリアリズム的な手法で絵画を制作していたシャーマンでしたが、エイドリアン・パイパーなどの写真表現を基盤にするアーティストとの交流をきっかけの一つとして、写真を自身のメディウムとし始めました。

バスのさまざまな乗客に扮して写真を撮影するシリーズ《Bus Riders》という作品をはじめとし、《Untitled Film Stills》は映画のセットを利用して制作した広告写真や映画の1シーンを彷彿させる内容の写真シリーズです。
シャーマンは古着やウィッグを身に着け、さまざまな女性に扮している。シャーマンによれば1950年代から1960年代のハリウッド映画、ノワール映画、B級映画、イタリアの前衛映画などに登場するステレオタイプな女性役から着想を得ているといいます。



⑦ヨーゼフ・ボイス


ヨーゼフ・ボイスは、脂肪やフェルトを素材とした彫刻作品の制作、アクション、対話集会のほか、政治や環境問題にも介入したことで有名です。
自身の活動を「社会彫刻」と呼び、従来のアートというカテゴリに収まらない多岐にわたる活動を広げました。
幼少期より自然や動物に関心を寄せ、20代前半の時の従軍経験時に負傷した際に現地のタタール人に脂肪とフェルトで傷を手当てしてもらったという経験から、自身の制作素材に選んでいました。


フルクサスという芸術グループの中心メンバーとしてさまざまなアクション的作品を発表し、頭に金箔やはちみつをつけたボイスがウサギの死体を腕に抱いて絵にふれさせるアクションや、ボイスがアメリカ着の空港から救急車でコヨーテのいるギャラリーに運ばれ、1週間暮らした後に、再度ドイツへ出発するというもので、コヨーテとの行動のみを強調することで、先住民に対するアメリカ社会の抑圧を批判しました。


存命の著名な現代アーティスト
⑧アニッシュ・カプーア


カプーアは、インドのムンバイに生まれたイギリスの現代アーティストです。
色彩、光、知覚、空間を直観的に思考させる、哲学的かつ触覚的な作品が世界的に高い評価を受けています。
世界で最も黒い物質「ベンタ・ブラック」という塗料で塗装した、膨らみも凹みも全く見ることのできない立体作品。巨大な凹面鏡に、鑑賞者とその後ろの風景が奇妙に歪んで映し出される作品。まるで内臓や血肉のようなグロテスクな赤い塊を、真っ白な部屋で大砲を使って打ち出す作品。


一つ一つは一見すると謎に包まれつつ、人間の視覚体験や感覚の基盤にまで介入するような、空間全体を使ったインスタレーション作品は、彼の独自の視点を象徴的に表現しています。


⑨草間彌生


近年、世界で最も売れている女性アーティストとなった草間彌生。
2019年には、女性によって作られたアートの全オークション売上のうち、彼女の作品が市場の25%を占めたと報告されました。
草間の革新性は、その偏執的な作品作りと、メディアを超えてパフォーマンスや部屋全体なども作品として捉えているところにあります。


彼女のアイコニックなかぼちゃ・水玉といったモチーフは現在ではさまざまなデザインとなって日常生活に普及しています。しかし、元々は精神病的な性質を患っている一人の人間としての表現という凄みを持った、シンプルな点を描くという行為の集合体だったのです。
彼女の作品はある種ポロックと似ていて、最終的に出来上がった作品それ自体に全ての価値が集約されているのではなく、むしろその過程、それを描かざるを得なかった草間彌生という唯一無二の人間性の表出として絵画やパフォーマンスの作品が認められていると言えるでしょう。

⑩ブルース・ナウマン


ブルース・ナウマンは、アメリカを代表するコンセプチュアル・アーティストの一人です。
ネオン管で過激な言葉を提示した作品や、人間の運動を切り取り貼り付け繰り返すことで成立させる映像作品、また詩的なフレーズを音読するスピーカーを通した声が部屋を交錯する作品など、メディウムを選ばず、哲学的な思索を誘う活動を多く発表しています。

ナウマンは2009年にはヴェネツィア・ビエンナーレというアート界のオリンピックとも呼ばれる国際展にてアメリカ合衆国のパビリオン(展示館)で国代表として展示を行い、金獅子賞(最も名誉ある賞)を受賞しました。


ナウマンの作品は、20世紀を代表する哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの『哲学探究』という著作に大きな影響を受けています。
この著作の中では、私たちが日常的に運用する言語を介したコミュニケーション全般を「言語ゲーム」と呼び、言語の、すなわちゲームの運用方法によってのみそのルール=言葉の意味は決定されるというコンセプトを中核とした断片的・箴言的な文章が綴られています。
ナウマンは、人間の運動や言語の一片を切り取り、拡大し、反復・強調することで、その日常的な運用方法から逸脱させます。ナウマンが行ったことにによって初めて生まれた(のではないかと鑑賞者が思ってしまうような)新たな行為や言語の意味を、鑑賞者である私たちは考えるよう要請されています。


まとめ

いかがでしたでしょうか?「現代アート」と呼ばれる未知で難解な分野も、一つ確かに言えるのは一人一人の具体的なアーティスト及び彼ら・彼女らの作品から出来上がっている集合体であるということです。
全体を一挙に理解することは不可能でも、一人一人、一つ一つの作品を自分なりに解釈してみるという行為を積み重ねることにより、より良いアートの理解が得られるでしょう。
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著者

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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net