Maeshin

【Artist Statement】

写真と絵画の間に生じる知覚差異や錯覚にフォーカスし、写真の芸術的価値を探究した作品を制作しています。ヘンリー・ピーチ・ロビンソン（Henry Peach Robinson 1830-1901）が唱導したピクトリアリズム（※写真を絵画的に表現し芸術的価値を主張した運動の相称。19世紀半ばロンドン発祥。）の文脈...

【Artist Statement】

写真と絵画の間に生じる知覚差異や錯覚にフォーカスし、写真の芸術的価値を探究した作品を制作しています。ヘンリー・ピーチ・ロビンソン（Henry Peach Robinson 1830-1901）が唱導したピクトリアリズム（※写真を絵画的に表現し芸術的価値を主張した運動の相称。19世紀半ばロンドン発祥。）の文脈を踏み現代技術を用いてその究極的探究をコンセプトとしています。
作品は写真であるが手塗りの漆喰や石膏にプリントすることで唯一無二のマチエールを得て複製を不可とし、 パール粉や石膏を使うことで岩絵の具の輝きや立体的質感の特徴をも取り込み表現することで実際の絵画と見間違われることも多く、 写真から絵画文脈への接続を目指したこの技法を自身は『擬態絵画』と称している。

【作品制作のテーマについて】
2020年以降私達の生活は一変した。多くの繋がりが分断され、戦争、疫病、恐慌、暗殺、異常気象...形を変え追い打ちをかけてくる昨今にもようやくパンデミックの終息の光が微かに見え始め世界中が『再接続』に急ぐ中、 "ただそこにある"という当たり前が実はそうではなかったと気付いた人も多いと思う。
ここ数年は著名人をはじめ多くの死の気配を目の当たりにし、また私事ではあるが同時に親族の希望となる新たな命の誕生や成長、過去から未来への時間軸による『繋がり』を感じることが増えた。人間は社会的動物なので1人では生きられない。それを自覚する自分自身も幼少期からの経験からどちらかというと人付き合いは苦手な分類に入る。だから人物を題材に、誰か人の心へと繋がる作品にしたい思った。
色を描かないシリーズ『 No Colors 』ではコロナを皮切りによって分断されてしまったたくさんの『繋がり』に目を向け、 具象性の高い人物写真でありながら"気配"を敢えて表現しないことで"無"や"静"をまとわせ人形のように心や感情の受け皿となる"ヒトガタ"を表現している。また白やグレーなど色のない部分は死を、唇の赤は生を、相反するが輪廻として連続する２つは過去から未来への時間軸による『繋がり』を連想させるものなっている。いつか誰かの心の拠り所となる作品になれば嬉しく思う。