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  • CURATOR’s EYE

現代アートはゴミ!?美術作品とゴミの線引きとは

2023/04/26
TRiCERA ART TRiCERA ART

「現代アートってくだらなくない?」
「現代美術の作品がゴミと見分けがつかない…」
そんなふうに思うことも、たまにあるかもしれません。
確かに、世界にはどう見てもいわゆる「作品」には見えない現代美術作品や、実際にゴミと思われて廃棄されてしまった不運な作品もあります。
今回は、作品とゴミの境界線を探るようなエピソードをご紹介します。


東大食堂から廃棄された宇佐美圭司の大作

2018年春、東大本郷キャンパス(東京都文京区)の中央食堂の壁に1977年から展示されていた画家・宇佐美圭司(1940~2012年)の大作《きずな》(4枚組みキャンバスで構成。縦3.7m×横4.8m)が、所有者である東大生協が食堂の改修工事に際し廃棄処分していたことがわかりました。
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宇佐美圭司は60年代から発表をしていた有名な抽象画家で、作品制作とともに文学者・建築家・音楽家としても業績を残している大家でした。
長年の間に関係者が世代交代し、その存在が忘れられ、あるいは見慣れ過ぎて価値に気づかないまま捨てられてしまったというのが主な理由だと考えられています。
東大はこの事件を深刻に受け止め、翌年9月にはシンポジウムを開催し「公共の場における美術作品」をどのように捉えるべきかという議論を開かれた場で行いました。
実は、宇佐美の作品のみならず他の肖像画や胸像なども、設置理由が忘れ去られたことが原因で撤去や廃棄の憂き目に遭っていました。美術・文化的な価値のあるものを、ただ置いておくのではなく「語り継いでいく」ことが同じくらい重要であることが示唆された事件でした。
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清掃員がダミアン・ハースト作品をゴミと間違えて処分

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イギリスの現代美術家の中でも最も有名と言って良いアーティスト、ダミアン・ハーストが2001年にウェスト・ロンドン・ギャラリーで展示していた灰皿を重ねただけのインスタレーション作品が、清掃員によってゴミと間違えられて捨てられてしまいました。
ハースト自身はのちに「なんて面白いことだ」とコメントしていますが、この作品がゴミ袋に入れられて捨てられた後、それが作品だっと発覚してからスタッフがゴミ袋を取り戻しに奔走し、結局取り戻したゴミ袋から再び作品が再構成されることができました。

イタリアでも同様にゴミと間違えられた作品

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床に散らばった作品
2015年、イタリア・ボルツァーノ市にある近現代アートの美術館「Museion(ムゼイオン)」で、空き瓶や使い終わったクラッカーなどを用いた芸術作品を、清掃員がゴミと間違えて片付けてしまう出来事がありました。
アーティストはGlodschmid & Chiariというデュエットで、ミラノ在住の女性アーティストでした。
展覧会のオープニングパーティーが行われた後、てっきりその残骸だと思われた作品は綺麗に片付けられてしまったのです。幸いゴミは分別して捨てられていたため、回収・復元は難しくなく、事件3日後の27日から展示は再開されています。
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片付けられた後の様子

ニューヨークで捨てられたまるでゴミ箱とゴミのような作品

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2014年2月、ポール・ブランカというアーティストによる数千ドルにも及ぶ作品が間違えて廃棄されました。見た目は完全にゴミ箱とゴミで、くしゃくしゃになった新聞紙、段ボール、クッキーのカスなどが床に散らばっていたと言います。
合計すると総額15,000ドルするとも言われたこの作品は、人類の消費行動による環境への負荷を想起させるために作られた作品でした。

トレイシー・エミンの散らかったベッド

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1998年、イギリス人アーティストのトレイシー・エミンが発表した《My Bed》という作品は、アルコールに溺れて散らかしたままになっていた自室のベッドを作品としてインスタレーションに落とし込んだものです。伝統的なアートに共通するような職人的技術や美しさと言ったものではなく、日常のアイテムを、ほとんど単に散らかしてあるだけに見える本作品は、当時から様々な賛否両論を呼んできました。



ギャヴィン・タークの1400万円のゴミ袋

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特にゴミ袋5つがまとめられた作品は、2016年にニューヨークで開催されたオークションで、日本円にして1400万円ほどで落札されました。
実は、この作品はただのゴミ袋ではありませんでした。ブロンズでできた、色もまるで黒いビニールのように見える作品だったのです。忠実に本物のゴミ袋のように作られた作品は、精巧に作られた作品です。
それを知ると、スキルとコストがかかるれっきとしたアート作品だということがわかります。



三島喜美代のゴミ箱アート

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三島喜美代は、文字通り缶ゴミでいっぱいになったゴミ箱を作りました。
ただし、人の背丈よりもおおきい巨大なゴミ箱です。
三島は、夫の茂司が通っていた競馬の馬券やら新聞が家に溜まっているのを見た時、それを使ってコラージュ作品を作り始めます。
次第に、絵画コラージュに収まらない彫刻を作り始めます。陶器を使った新聞をかたどった立体作品を発表し始め、割れさえしなければ永遠に存在する陶の姿に新聞を生まれ変わらせました。
直島のベネッセハウスミュージアムには、現在5mの高さに拡大されたくずかごが設置されています。
写真で見ればゴミにしか見えないものが、現実で見ると明らかなスケールの違和感によって作品でしかなくなるというこのコントラストが、三島の作品においては重要でした。
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アート作品と単なるゴミの違いとは

ここまで、「現代アート」と「ゴミ」の境目にあると思われてきた作品を紹介してきました。
結局、アーティストの意思と「これは作品である」という宣言、さらに「作品が展示される場」に置かれるという三つの条件が揃えばどのような物体でも作品になり得ることは明らかです。
これは、デュシャンが1917年に《泉》を発表したときにすでに予期されたことでした。そもそも《泉》も発表当時賛否両論ではありましたが、今では「現代アート」の概念を作り出した父として認められています。
宇佐美圭司作品の廃棄事件では、上記のうちアーティストの意思や作品宣言が、時の経過と情報共有の不足によって齟齬が生じていたというふうに理解できます。
作り手、展示する場の管理者、そして見る人の三者によって「アート作品」は成立しています。
その均衡が崩れたとき、それがどんなに高級な物質を使われていたとしても、日常的な物体であっても、同様に「アート作品」の枠組みからは外れてしまうのでしょう。
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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net