「なんだか古いイメージ」「博物館で見たことあるかな…」
水墨画というと、こんなイメージがつきまといがちかもしれません。
しかし、水墨の表現は西洋で発展した油絵よりもずっと長い歴史を持ち、現代でも水墨画家として活動するアーティストもいます。
今回はそんな水墨画を、初心者の方に向けて大解剖していきます。
水墨画とは?
水墨画の作品の特徴と魅力
まずは、「水墨画って一体何?」
という方のために、この画材の特徴をよく活かした作品をいくつかご紹介しましょう。
雪舟, 慧可断臂図, 1496
牧谿, 観音猿鶴図
狩野探幽, 雲龍図
ご覧のように、墨一色しか使わないため基本的にはモノクロームの絵画と呼ぶことができます。
油画など、通常のリアリスティックな絵画とは違い、光源を固定した様子は描かれず、画家の主観的な捉え方や錯覚だとしてもそのまま描くという特徴があります。
物事の見た目にとらわれないその描き方は、傑作をいくつも歴史上に残しています。
水墨画を書く際に必要な道具
水墨画は、基本的には煤(スス)を固めてできた「墨」を水で溶き、和紙などに描いた作品を指します。
学生の頃、書道の授業で触れたことのある人も多いものですね。
基本的には、書道で使っていたのとはそう変わらない、墨・水・筆・紙というシンプルな画材や道具を使って描かれます。
水墨画を描く際の心得
水墨は、基本的にシンプルな道具で描きます。そのため、水の扱い方、墨の濃度による墨液の振る舞いの変わり方など、細かな差異にまで目を光らせて自分の感じ方を研ぎ澄まさせることが必要です。
特に決まった方法があるわけではありませんが、楽しんでやるのは最も大事なことは確かでしょう。
これさえ抑えておけば使える!水墨技法の種類
①三墨法
筆に墨をつけ、水、淡墨(水の割合が多い)、中墨(中くらいの濃度)、濃墨(真っ黒)の4種類ほどに分けられるような「水→墨」のグラデーションを作ります。
それができた筆を紙に寝かせると、透明〜真っ黒の綺麗なグラデーションが一筆で描くことができます。
②破墨法
先に墨を置いた場所に、乾かないうちに再び異なる濃度の筆を重ねるような技法です。
これを行うと、例えば先に薄墨→あとから濃墨の場合、濃墨がじわじわと広がって独特の効果を得ることができます。
③撥墨法
撥墨法(はつぼくほう)とは、墨をそそいだり撥ね散らかすことで出来た偶然の形から山や雲、岩の形に見立てて描きだす技法です。
伝統的には、対象の輪郭線を引くことで形を捉えるようなものが主流でしたが、それを破壊するような斬新な技法です。
とても面白い技法の一つですが、後からしっかりとモチーフに見えるように細かな描写を的確に重ねる力が必須となってきます。
破墨山水図、雪舟
④たらし込み
墨や絵具を塗って紙を濡らし、乾かないうちに他の濃さの墨や絵具を置いてにじませるぼかしの技法です。
にじまない紙を使うことで効果的にこの技法を使うことができます。
水墨画の歴史
中国大陸、古代の水墨画
水墨画はもともと、中国で生まれました。
中国大陸では殷の時代には墨が使用され、墨を用いた絵画も漢の時代には存在しました。
漢代の壁画などには墨による線と顔料による着色によって描かれたものが現存しています。
唐代に水墨画として確立
唐代には墨の濃淡で表現する絵画が作られるようになりました。この時代の作品は、水墨画は山水画という中国における風景画の中でも、「特に墨のみを使って描いているもの」と定義されています。
撥墨法という、大量の淡い墨色で絵を大まかに描き、そこに濃い墨色をたらして、濃淡・ぼかしを付けて描いたり、逆に大量の淡い墨色、濃い墨色を付けて、はね散らすように素早く描いて濃淡やにじみを付けて描く技法が発明されました。
撥墨法の発展もあり、山水画の一ジャンルから、絵画の一ジャンルに変化したともいます。
日本の初期水墨画
日本において本格的な水墨画作品が現れるのは13世紀末頃で、中国での水墨画発祥からは4世紀近くを経ていました。
日本における水墨画の技法は中国から流入しましたが、必ずしも中国における主流の様式だけが受容されたわけではなく、また独自の道徳観や文化観とも相まって中国の水墨画とは異なる道をたどることとなります。
日本の初期水墨画は、絵仏師や禅僧が中心となって制作が始められました。師資相承(師匠から弟子へ仏法を伝える)を重視する禅宗では、師匠の法を嗣いだことを証明するために弟子に与える頂相(ちんぞう、禅僧の肖像)や禅宗の始祖の達磨をはじめとする祖師像などの絵画作品の需要がありました。
可翁筆 寒山図
日本の室町水墨画
室町時代は日本水墨画の全盛期と言えます。
足利家の寺である京都の相国寺からは如拙、周文、雪舟をはじめとする画僧を輩出しました。また、東福寺の画僧の吉山明兆は、濃彩の仏画から水墨画まで幅広い作品を制作したと伝えられています。
如拙, 瓢鮎図
周文, 水色巒光図, 1445年
雪舟等楊, 秋冬山水図
現代の水墨画
現代の日本で活躍する現役の水墨画家たちも見逃せません。
山岸千穂, 東風
1988年生まれの山岸千穂は、2015年に東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻描画・装飾研究室を修了しました。
日本美術などを中心に論じている評論家の山下裕二に「筆ネイティブ」と評された確かな技術で、到底筆による仕事とは信じられないような超絶技巧の作品を発表しています。
藤井湧泉, 蓮, 2007
藤井湧泉は、中国大陸全土で数万人に一人しか入学できない蘇州大学藝術学院を1984年に卒業後、翌1985年にすぐに北京服装学院の講師になりました。1994年に日本人の藤井伸恵と結婚した後、急速に日本の装飾芸術に開眼していきます。
2012年に哲学者の梅原猛より「湧泉」の雅号を授かり、日本の水墨界を牽引しています。
TRiCERAおすすめの水墨画を紹介
Mimicry butterfly chick by keika
W 30.20cm x H 40.00cm|¥10,000
Cat Pounce by Soo Beng Lim
W 27.50cm x H 37.50cm|¥79,500
Abstract Polka Dot Painting by amini54
W 60.00cm x H 90.00cm|¥13,200
ENSO by GOSHOW
W 60.60cm x H 62.80cm|¥180,000
Bamboo branch by Ilana Shechter
W 34.50cm x H 34.50cm|¥24,300
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