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Quick Insight Vol.2 - 浅間明日美 -

2021/01/29
Shinzo Okuoka

浅間明日美は、刺繍という技法を通して自分自身を、世界そのものを理解しようとする。「私は本能的なものと作品の間に立つ、器のようなもの」という浅間にとって、自分が捉えた根源的な感覚をスケッチし、布に縫い付け、その行為を繰り返す刺繍は、一つの祭儀的な意味がある。今回は制作の背景から現在の作風になった経緯について話を聞いた。


浅間さんは刺繍を使った絵画を制作していまね。刺繍はどこで学ばれたんですか?

実はまったくの独学なんです。誰かに習ったわけでもないし、専門的なルールに則っているわけでもない。自分なりの方法を模索し、見つけながらやっています。ただ独学なので、自分なりのルールはありますけど、でも知識として体系化はしていない。だからたまにワークショップを依頼されることもあるんですけど、教えることが出来ないんです

刺繍を始めたきっかけはなんだったんでしょうか?

元々はイラストレーターとして活動していたんですけど、 刺繍へ移ったのは、子供の病気がきっかけです。看病のために活動をお休みしていたのですが、でも制作はしたかったし、表現もしたかった。だけどペインティングの時間と場所を捻出することは難しかったんですね。どうにか生活に地続な方法で制作が出来ないか、と考えました。そしてたどり着いたのが刺繍だったんです。針と糸だけあれば、極端な話、台所でも出来てしまいますから。  

本歌取りシリーズ-バッカス-

33 × 33cm, 刺繍・布・パネル

 

刺繍を続けている点はどこにあるんでしょうか?

一番は性に合っているからだと思います。刺繍は、それこそ同じ行為の繰り返しなんですね。同じような手の動かし方を繰り返していく。その反復よって自分のエゴを離れるというか、ある意味、瞑想に近い感覚があると思っていて。儀式のようなものかも知れませんね。刺繍という行為によって真理に近づける気がするんです。


その表現の方法は、表現の中身にも影響を与えていますか?

そう思いますね。私の作品は社会的でも、何か政治的なメッセージがあるわけでもない。コンセプチュアルでもない...と思います。もっと抽象的な、自分自身の存在確認をしている感じです。縫っている時だけ自分を感じる、という身体感覚です。でも、そこにエゴはない。すごくシンプルなレベルでの存在確認なんですね。

冬ガール

25.8 × 31.8cm, 刺繍・布

 

エゴイズムのなさが大事なんですね。

私はどちらかというとインスピレーション型なんですけど、そうなると、頭に降ってきたイメージをどれだけ丹念に、どれだけ丁寧に自分の外に出すことができるかが大事になって来るんです。どれだけ純度が高い状態で作品化できるか。そこが重要なんです。作品のテイストも無垢さのようのなものを重視しているかも知れません。

本歌取りシリーズ-ジュリアーノ-

33 × 33cm, 刺繍・布・パネル

 

 

つまり浅間さんは、インスピレーションと作品の間に立つ存在なんですね。

だからこそ、私自身のエゴとか、好きだとか嫌いだとか、そういうことは前に出したらダメだと思ってます。自我が入ると濁ってしまう。怒っていても、浮かれていてもダメ。評価されたいとか、こう見えるだろうなとか、そういうことを考えてもダメで。作品が濁ってしまう気がするんです。

シュルレアリスムの方法論に「自動筆記」という、描き手のエゴを消すための手法があります。それに近いですね。

私の場合は「インスピレーションがちゃんと形になるように案内する」感じでしょうか。実体のないイメージを、刺繍という方法で実体化させる。反復的行為で、ゆっくり、形を与えていく。そういう時に自分の好みとか、そういうのは入れないですね。自分の頭で考えるよりずっといい作品が出来ますから。「思いつく」→「スケッチ」→「キャンバスに刺繍」といった感じの流れです。

忍者

31.8 × 25.8cm, 刺繍・布

 

最後になりますが、浅間さんにとって制作するとはどういうことを意味するんでしょうか?

インスピレーションと作品の間に立って、精神的なものから物体的なものへと変換される、その流れのお手伝いをする感じです。新鮮なアイディアをいかにそれを丁寧に掬い上げることができるか。そこが勝負です。

昔は「アーティストじゃなくてシャーマンだね」と言われてコンプレックスに感じていましたけど、今は気にならない。むしろアイデンティティになっているのかなと。でも、だからこそ自分の心身には気を使います。具合悪かったり精神的に悪かったりすると、良い作品は出来ない。私自身、いい器になっておくことが大事なんです。

プロフィール

1977年岩手県出身。2000年に駿河大学・法学部卒業。大学卒業後、セツモードセミナー研究科、AIT(アーツ・イニシアティブ・トウキョウ)アーティストコースなどでイラストレーションを学ぶ。2014年より美術家として活動をスタート。主な展示にテラダ倉庫 ART STAND EXIBIHION(2015)、New York Ashok Jain Gallery(2016)、spiral take art collection(2017) 、art formosa台北(2018)など。

著者

Shinzo Okuoka