Hiroshi Yoshida

~無常~

岩には非常に硬く強固なイメージを持っていましたが、
今ではそれも相応の衝撃や負荷がかかれば
崩れゆくものであることを実感しています。

水の流れは如何様にも姿を変える
柔軟さを持っていますが、
同時に非常に硬い集合体として
岩を削りながらこの地を流れていきます。

この環境では人間のやわさ...

~無常~

岩には非常に硬く強固なイメージを持っていましたが、
今ではそれも相応の衝撃や負荷がかかれば
崩れゆくものであることを実感しています。

水の流れは如何様にも姿を変える
柔軟さを持っていますが、
同時に非常に硬い集合体として
岩を削りながらこの地を流れていきます。

この環境では人間のやわさを認識し、
同じようこの地球も決して絶対的な存在ではないのだと
理解することができます。

水の流れの中に
微細なバランスで静止している石を置くことで、
それが永遠には続かない
ひと時の出来事や状態であることを示しています。
つまり、「無常」を私の作品は表しています。


~作品について~

絵や写真はその部屋の窓になると聞いたことがあります。

私の作品の最終形態は写真です。

自宅やオフィスに飾った時に
部屋の雰囲気が明るくなったり、
何かの合間に見た時に心地良さや元気をもらえる。
そんな作品作りを心掛けています。

私の作品には特別な名所や
撮影スポットは出てきません。
できるだけその人の日常に作品が
馴染んでほしいからです。

どこかで見たことがあるような川や海の情景に
石と水のアートを添えることで、
ストーリーが生まれ輝き始めます。

試しに作品からイメージで石を取り除いてみてください。
いかがでしょうか。

それはそれで綺麗だけれど、
石があることで感じられる何かがあるはずです。
石と水とその時の情景、それらがセットで
ひとつの作品になっています。

気が付かないうちに少しずつ変わっていく情景に目を向け、
時には石のバランスが成立した後、
暗くなるまで川の中で撮影を続けることもあります。

四季折々の自然が見せてくれる姿を
肯定的に感じてもらえるよう、
ひとつひとつの作品にはテーマがあります。

暗い谷を流れる川に艶やかな美しさを見て、
くすんだ落ち葉には円熟した渋味を感じ、
陽の光に枯れ木の色が乗ることで風情が出てくる。

どんな情景にもその時々の「良さ」があり、
それに合わせて石を添えること。
それが私の作家としての役目です。

大切なのは作品であり、それに感動してもらえること。
作品で扱う石をむやみに積み過ぎたり、
技術を駆使し過ぎて、
本来あった「良さ」をなくしてしまわないようにすること。
プロフェッショナルの作家として
大切にしていることのひとつです。

そして作品は画像ではなく
写真をお部屋に飾っていただけると幸いです。

きっと心地よい風を運んできてくれるでしょう。