Ken

[テーマ]
*客観と主観の統合

美の形態というものが、人間の精神的営みから離れて、自然の世界に自律して存在しているのか、あるいは偶然に意味もなく存在する対象に、人が勝手に美を見出しているのか。自分が抱く事象のイメージや世界像と、現実との食い違いに興味はないし、美については、どうあがこうとも上の二つの...

[テーマ]
*客観と主観の統合

美の形態というものが、人間の精神的営みから離れて、自然の世界に自律して存在しているのか、あるいは偶然に意味もなく存在する対象に、人が勝手に美を見出しているのか。自分が抱く事象のイメージや世界像と、現実との食い違いに興味はないし、美については、どうあがこうとも上の二つのいずれかなのであるから、ちょっとした神秘的なことと済ませば、さしたる難儀もなく日常に没頭し、深入りを避けることはできる。にもかかわらず、自分が抱いている美のイメージが、現実には存在しないという確信が時折り、足元をふらつかせる。あり得る世界のどちらにも属さないことへの驚愕、不安、慄き。いったいこの観念はどこからやってきたのか。果たしてこれは、たとえば美しい風景や物を見て感じたことなのか。先験的なものの存在についての哲学が今なお盛んであったなら、答えは導かれていただろうか。その答えは心許ない地盤を強固にしてくれただろうか。なんであれ、自分の美しいと感じるものが、具体的な物象でもって存在しないことは明確なのだ。それでいてなお、自分の外で起こる物的事象なかに美が存在するのもまた明確だ。この二つは相反しているのか、あるいは両立しうるものなのか、あるいは将又、全く同一のもの、同一の次元に存在しているものなのか。この食い違いを棚に上げ、無視することの方が却って難しく感じる。しかし同一物、同一次元が不可能であると判明してしまうこと、それこそは最も恐れていることだが、どういう訳か、何もしないでいることが出来ない。少なくとも、両立は可能なのではないかという期待のうちに。