FUKA OGIHARA

「境界」をテーマに、東洋的な美意識の境界、その探究と融合を目指し制作を行っている。中国をルーツとした複合的に絡み合った東洋のかたちをベースに、画面の中で様々な境界を融合させるという試みを行っている。
まず、私が専門とする「日本画」は、本来、江戸時代以前の「日本の絵画」とは異なった文脈で語られることが...

「境界」をテーマに、東洋的な美意識の境界、その探究と融合を目指し制作を行っている。中国をルーツとした複合的に絡み合った東洋のかたちをベースに、画面の中で様々な境界を融合させるという試みを行っている。
まず、私が専門とする「日本画」は、本来、江戸時代以前の「日本の絵画」とは異なった文脈で語られることが多い。しかし、私はあえて江戸時代以前に存在していた「日本の絵画」を含めた「日本画」を描いているという立場に立ちたいと考えている。その曖昧な呼称は、時として様々なものの境界に切り込んでいくための糸口になるのではないかと考えているからである。
日本で描かれていた絵画、描かれていく絵画と、より狭義での「日本画」そのどれにも同様の美意識が根底に存在しているように思う。それらは、分断と連続を伴いながら今日まで発展してきたのである。私はその分断を繋ぎ合わせるための答えを、古典に探した。そこには西洋的な文脈に依らない、内と外とする以前の日本の姿、東洋的な美意識の根幹と、そこから発展する日本独自の美意識があると考えたためである。そのため、私の絵画には過去の文献などを参照した「古典技法」の再現技法などを用いたものは少なくない。
現在は古典に軸を置いて、現代的なテーマを扱いながら、墨を用いるモノクロームの画面作りを行っている。「墨」という画材は、中国を起源とするアジア独自の技術で造り上げられるものであり、それは実用的なものとして人々のそばにありつつも、文化財的な価値を孕むものも多く存在し、使う人を分断しない中間的な立場に存在すると考えるためである。そして、墨は画面における作家の意図的な表現に加え、水と墨の偶発的な自然現象が発生し、その両方の美しさが鑑賞者の抽象的な判断力へと委ねられるという側面がある。その価値判断には文化的な背景が影響しやすく、鑑賞の幅が広いという事が、私が墨という画材に感じる魅力であり、またそれを制作へと取り入れる意図である。
私達は古典的な絵画が作り上げた文化の上に立っている。その文化を再認識し、現代の自らの価値基準を明確化しつつ、現代の文化や生活で再度読み解いたものをつくることが、日本画を学び、歴史を学ぶ自分の使命だと考える。
「過去」と「現代」を結び、「内」と「外」融合し、様々な境界を越えた、新たな絵画観を打ち出していきたい。