制作の起点になっているのは、日々の生活の中でふと頭に浮かんでは消えてしまう脈絡のないイメージや言葉、それらを記録し保持したいという欲求。画材は、次々と湧き出てくるイメージを一番搾りのように新鮮で勢いのある状態で捕まえたいので、いつでもどこへでも持ち運べるペンや鉛筆を使用している。また、偶然性や繰り返し、無意識の力を借りて自分の想像力の限界を超えて行くために、下書きなしの即興細密画のスタイルで制作している。このように、雑多なイメージを直感的に詰め込み、細かく描きこむことで逆に、作品が無意味性を帯びたり、国籍や主義主張を超えた中立的な世界に見えてくることがある。時々、その中立性こそが私たちの心の底にある純粋無垢な記憶を揺さぶり、豊かなイメージを共有できる余白となってくれることを期待したりする。
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