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日本のアウトサイダーアート作品とその独特な世界

2023/05/12
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近年注目が高まりつつある、「アウトサイダーアート」。
専門的な美術教育を受けたわけではないものにより創作された芸術作品を総称してアウトサイダーアートと捉えることが一般的ですが、そのような形式的な区分をも超越するパワーを持った「アウトサイダーアーティスト」たちの活動と作品を見てみましょう。


アウトサイダーアートとは?

上述した通り、美術の専門的な教育を受けていない人間によるアート作品をアウトサイダーアートと呼びます。元々、「アール・ブリュット(Art Burt)」(フランス語で「生の芸術」の意味)という言葉を、20世紀のフランス人芸術家ジャン・デュビュッフェが考案しました。
デュビュッフェは、精神的な障害を持ち精神病院で生活する患者が創作する、緻密で謎に満ちた作品に注目し、それにアール・ブリュットという名をつけました。そのため、この語は障碍者芸術というカテゴリーと密接な関係を持っています。
アウトサイダーアートは英語で「外部の者による芸術」を意味しますが、アール・ブリュットより比較的最近作られた言葉であり、障碍者芸術という枠にとどまらず広く「今まであまり顧みられてこなかった美術一般」という意味で使われることもあります。



日本のアウトサイダーアートの特殊性

何がアウトサイダーアートを特徴づけているのでしょうか?
これまでは、既存の有名な芸術家の作品と奇遇にも相似しているような造形感覚が散見され、教育を受けずともクリエイティブな仕事を生み出すことのできる人間の本性が垣間見れるとして評価されてきました。西洋においては、デュビュッフェの頃から「アウトサイダーアートといえば精神疾患を持つものの芸術」というイメージが定着していると言えるでしょう。
それに対して、日本における受容は少し趣を異にしています。
日本でのアウトサイダーアートの広まりは、「裸の大将」としてドラマ化するなど大衆的な人気を博した「山下清」や、「エイブル・アート」運動、また精神科医で著述家の式場隆三郎によるフィンセント・ファン・ゴッホの啓蒙や二笑亭という非専門家による建築の評価に見られるような出来事に端を発します。
日本では受容の最初期から、作品というよりは作家の特殊な生き方、しばしば苛烈な・さすらいの生き方をする「キャラクター」としてのアーティストのイメージが定着していました。
これは、福祉の観点から障碍者の人生を活発にするものとしての芸術の評価という見方と基盤を同じくしています。
兵庫県立美術館の学芸員でアウトサイダーアートの専門家、服部正によれば、このような日本の特殊な受容は純粋な美術運動ではなく福祉活動の一環としての側面を強調しすぎるとして批判的な言論を展開しています。これからは、美術界と福祉業界がさらに連携を強め、コンテンポラリーアートとしてより広い観衆の間で一般的になるような「アウトサイダーアート」概念の確立が求められています。


日本人アウトサイダーアーティストの作品

ドットや文字を執拗に描き続ける「喜舎場 盛也」

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喜舎場 盛也(きしゃば もりや)は、幼少の頃から文字に執着していたといいます。
自室でこっそりと描き溜めていた作品が2001年に展覧会で紹介されると、国内外でたちまち注目を浴びます。沖縄県浦添市にある「わかたけアート」に所属して制作活動を続ける喜舎場ですが、近年はそれまで漢字で画面を埋め尽くすように描かれていた要素がいろとりどりの点や幾何学的な形態へと変化しており、より抽象的な表現へと移行しているのが見て取れます。
ドットで画面を埋め尽くすといえば世界的に有名なアーティストの草間彌生が連想されますが、彼らはお互いを全く参照することなく類似する表現に辿り着いており、使う画材や筆圧といったより細かい要素に差異が見られます。このことは、人間の「何かを描きたい・表現したい」という欲求の本質的な強靭性を私たちに再認させるような効果があります。

太古の世界からやってきた青のドローイング「坂上チユキ」

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坂上チユキは、古今東西の文学や音楽、生物学から着想を得て、太古の原始生物や微生物を思わせる微細なドローイング、油彩、彫刻作品を制作するアーティストです。
「約5億9000万年前プレカンブリアの海で生を授かった」という自身の内面世界を表現する、独特な魅力を持ったアーティストです。
作品は、紙に水彩、鉛筆、インク、水晶やラピスラズリの顔料を用いた青を基調に、多様なイメージが積み重なる画面を作り出しています。1993年に開催され、日本で「アウトサイダーアート」を最も普及させた展覧会と言える「パラレル・ヴィジョン 20世紀美術とアウトサイダー・アート」展(世田谷美術館)で初めて作品がまとまって展示され、その後、現代美術やアールブリュットなど様々な領域で紹介されています。

優しい形を描き続けた「舛次 崇」

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兵庫県で有名な福祉アート施設「あとりえすずかけ」に所属していた舛次崇(しゅうじ たかし)は、シンプルな形態ながらも力強さを感じさせる筆致で植木鉢、ハンガー、置物といった身近な用品をパステルを使って描きました。
抑制された色使いと、もののボリュームや質感ではなくシルエットだけを取り出す手法、また余白にも感じられる修正の息遣いや画面から大胆にはみ出す形など、様々な魅力を感じさせます。
生涯で500点以上もの作品を制作し、没後は兵庫県立美術館で個展が開催されるなど、評価が高い作家です。

特殊な文字で日記を描き続ける「戸來 貴規」

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戸來 貴規(へらい たかのり)は、B5のコピー用紙に他の人間には意味不明な幾何学模様を描き続け、その数はおよそ1000枚にまでのぼっていました。実はこの模様は文字で、毎日の日付や曜日、気温や彼のしたことが書かれている「日記」だといいます。彼は知的障害者施設で暮らしており、ある日その模様の美しさに注目して根気強く一枚一枚の解読を一緒にした職員によって発見されるまで、戸來の仕事は全く見過ごされていました。この作品は、現在はスイスのアール・ブリュット・コレクション美術館に収蔵されています。


アウトサイダーアートの作品が見られる施設紹介

ボーダレス・アートミュージアム NO-MA(滋賀県)

noma
日本初の障碍者による美術作品の展示のために設立された施設です。
近江八幡市の重要伝統文化材保存地区としても知られる八幡地区永原町にあり、昭和初期に建てられた旧野間邸をオルタナティヴ・スペースとして改築したものになっています。絵本作家であり、日本のアール・ブリュット / アウトサイダーアートの評価確立に尽力してきた「はたよしこ」がアートディレクターを務めています。
「ボーダレス」には、障碍者芸術のみにはとらわれずに広く越境するような表現活動を支援していくという当施設のスタンスが反映されています。

開館時間 11:00 - 17:00
休館日 月曜日(祝日の場合はその翌日)、展示替え期間、年末年始
観覧料 一般: 200 ~ 300円 高校生・大学生: 150 ~ 250円
公式サイト


注目の集団「ヘラルボニー」が展覧会を開催!

artinyou
「異彩を、 放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット「ヘラルボニー」が、三井住友銀行東館1階のアース・ガーデンで、16作家による展覧会「ART IN YOU アートはあなたの中にある」を開催します。会期は2023年5月20日〜6月17日。
金沢21世紀美術館の学芸員を務める黒澤浩美がキュレーションを務めます。
展覧会の詳細情報はこちら。



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現代アートの歴史・楽しみ方・各アートジャンルの解説など、役に立つ情報を芸術大学卒業のキュレーターが執筆しています。TRiCERA ARTは世界126カ国の現代アートを掲載しているマーケットプレイスです。トップページはこちら→https://www.tricera.net